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施設介護のチームケア 新人職員が直面した壁と成長

Tags: 介護施設, チームケア, 新人職員, 体験談, キャリア形成

施設介護のチームケア 新人職員が直面した壁と成長

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ケアワークは、多岐にわたる現場で展開されています。その中でも、介護施設におけるケアは、多くの専門職やスタッフが連携して利用者さんの生活を支える「チームケア」が中心となります。本日は、私が介護施設に入職して間もない頃、このチームケアの現場で経験した戸惑いや困難、そしてそこから得られた学びについてお話ししたいと思います。

私が介護施設で働き始めた頃、大学で学んだ知識や理想と、現場の現実との間には大きなギャップがあることを痛感しました。特に難しさを感じたのが、チームの中での自分の立ち位置と役割でした。

新人職員としてチームケアに飛び込む

施設には、経験豊富な先輩職員、看護師、リハビリ専門職、生活相談員、栄養士など、様々な立場の人たちが働いています。利用者さんの日々のケアは、これらの職種が密に連携を取り合いながら進められていきます。

入職当初、私はまず、先輩職員のシャドウイングを通して業務を覚えることに集中しました。しかし、業務をこなすこと自体に慣れてくると、次に壁として立ちはだかったのが、「情報共有」と「他職種との連携」でした。

例えば、ある利用者さんの些細な変化に気づいたとします。これをチーム全体で共有する必要があるのですが、どのタイミングで、誰に、どのように伝えれば良いのかが分かりませんでした。申し送りの時間も限られていますし、忙しそうにしている先輩に話しかけるのを躊躇してしまうこともありました。結果として、情報伝達が遅れてしまったり、必要な人に情報が届かなかったりといった失敗を経験しました。

また、看護師さんやリハビリ専門職さんとの連携も、当初はぎこちないものでした。ケアの中で気づいた医療的な側面に関わることや、リハビリの進捗に影響しそうなことを、どのように伝えればよいのか。専門用語への理解不足や、それぞれの職種の視点の違いから、うまくコミュニケーションが取れないと感じる場面もありました。

葛藤と学びの過程

こうした経験を通して、私は自分自身の未熟さや、チームの一員としての役割を十分に果たせていないことへの葛藤を抱えるようになりました。「もっとうまく立ち回りたい」「チームに貢献したい」という思いがある一方で、どうすれば良いのか分からないという焦りを感じていました。

この状況を乗り越えるために、私が意識するようになったのは、以下の点です。

  1. 積極的な質問: 分からないこと、不安なことは、遠慮せずに先輩や他職種の方に質問する。最初は勇気が必要でしたが、「分からないまま進める方がリスクが大きい」と考えるようにしました。
  2. メモと振り返り: 申し送り事項や、日々の業務で気づいたこと、先輩からのアドバイスなどを細かくメモに取り、業務後に振り返る時間を設けました。
  3. 相手の立場への配慮: 情報を伝える際には、相手の専門性や状況を考慮し、簡潔かつ具体的に伝えるよう努めました。例えば、看護師さんには医療的な視点、リハビリ専門職さんには身体機能に関する視点から情報を整理して伝えるなどです。
  4. 小さなことから貢献: 最初から大きな成果を出そうとするのではなく、例えば共有スペースの整理整頓を率先して行うなど、チームがスムーズに機能するための小さな貢献を積み重ねることを意識しました。

これらの取り組みを通して、少しずつではありますが、チームの中での自分の役割が見えてきました。情報共有のスキルも向上し、他職種との連携も円滑になっていったと感じています。

見えてきたケアワークの現実と価値

チームケアの現場で経験した戸惑いや困難は、「見えにくい労働の現実」の一側面であったと言えます。ケアワークは、単に身体介助を行うだけでなく、利用者さんの情報を多角的に捉え、チーム全体で共有し、それぞれの専門性を活かして最適なケアを作り上げていく、高度なコミュニケーションと協調性が求められる仕事です。

しかし、この困難なプロセスを乗り越えた先に、「ケアワークの価値」を改めて実感する瞬間があります。それは、チームで協力したからこそ、利用者さんの笑顔を見ることができたとき、あるいは、自分一人の力では気づけなかった利用者さんの変化に、チームメンバーの視点を通して気づくことができたときです。

チームケアは、個々のケアワーカーの負担を軽減し、より質の高いケアを提供するための重要な仕組みです。そこには、意見の対立や価値観の違いから生じる摩擦もあるかもしれませんが、それらを乗り越え、互いに支え合い、学び合う過程そのものが、ケアワークの価値を高めているのだと感じています。

新人としての私のケア・ジャーニーはまだ始まったばかりですが、この経験を通して、ケアワークにおけるチームワークの重要性と、その中で自分自身がどのように成長していくべきかのヒントを得ることができました。これからケアの分野で働くことを目指す皆様にとって、私の経験が少しでも参考になれば幸いです。